あたしは、走る。


この2年ずっと暇だったから、ここの敷地は嫌というほど歩き回った。


どこに見張りがいるか、それくらいは熟知している……


はずだったのに。



「曲者だ!!」



おわああああ!!


あっさり見つかっちゃったよ!!


くっそー!!


見張りの弓矢が飛んでくる。


あたしはそれを避けながら、必死で塀の上に上がった。


使ったカギ爪と縄を放り出すと、外堀にボチャンと、音としぶきを上げて落ちた。


ここが、最後の難関。



「……とりゃーっ!!」



あたしは外堀の向こうに向かって、全力で跳躍した。


下手すりゃ池ポチャで、捕まって死ぬ。



「おっとっと、っと……」



何とかつま先が堀の向こうに着地。



「よしっ!」



毎日こっそり訓練をしていたおかげで、筋力は衰えてなかったみたい。


振り返らず、一目散で町の方へ走る。


あたしの目は、闇夜に慣れてる。


大丈夫。


絶対、逃げきれるはず……!!