シャン、と鈴の鳴る音が遠くから聞こえた。



「上様のおな~り~」



はいはい。


どうせこっちには来ないんでしょ。


さささ……


たくさんの足音は、やっぱり遠ざかっていくばかり。


こちらに近づいてもこない。


部屋づきの侍女も、ふわぁとあくびをした。


あーもう、毎日毎日暇なんだけど。


ねえ、上様。


無理やり奥入りさせたわりには、あんまりじゃあありませんか。



「……今夜は、早く休もう」


「はい」



侍女は嬉しそうな顔をし、寝床の支度をする。


あたしの企みも、知らずに。



そう。


あたしは、今夜。



この、大奥から抜け出します。