「ずいぶん涼しくなったねー」

「ホント、気持ちいい風だね」


あたしと真美は、学校の廊下の窓から空を見上げていた。


夏休みが終わり、二学期もとうに始まった。

最近じゃ、少し肌寒いくらいの風が吹くようになった。


あ~気持ちいい~。

こんくらいの季節が、過ごしやすくて一番好きだね。あたしゃ。



「里緒、この夏は大変だったもんね」

「本当だよ。じー様の死から始まって」

「夏バテと、食中毒と、インフルエンザだっけ?」

「ずーっと寝込んでて夏の間の記憶が一切無いよ」

「夏にもインフルってあるのねー」



我ながら、よっぽど苦しんでたんだろうな。

記憶が白くボンヤリしてる。


まぁ、いいけどね。

苦しい記憶なんて思い出したくもないもん。

楽しい記憶も一切無いのが、ちょっと寂しいけどさ