…全く、一枚の五円玉が、あんなアブナイ事件を引き起こすなんて、思っても見なかったわ。


-チャリ-ン、ぱん、ぱん-


「…どうか、今年こそ恵まれない乙女に救いの手を。

今年の夏も、無事、何事もなく過ごさせてもらえました(ToT)
齢十六にして、未だ彼氏という物を知りません。
腰まで伸びる長い、自慢の黒髪も、今の所、殿方の目には映らないようです。

どうか、秋までには彼氏を…」

「五円でご縁を…か。全く、古臭いオンナだな夏美、お前は。」

「ま、魔夜!?」

9月とは言え、昼間の暑さが和らぐには少し早い季節。

とある神社の境内で、木陰で涼むついでに神様に恋愛成就をお頼みしていた私に話しかけてきたのは、神様じゃなくて、とってもイジワルな悪魔だった。

「何で魔夜がここに…まさかアンタ!?さっきからずっとここで私のお願い事を…」

「ああ、立ち聞きしてた。」

「最低!女の子の願い事、盗み聞きするなんて!」

「たまたま立ち寄ったらお前がいたから、何してんのかなって、な。」