ハンズは
青年になりました

戦争は終わったけれど
世界中の
ほとんどが
貧しかったのです

お金持ちは
いたけれど

貧しい人達は
1日に1度の
食事すら出来ない程
貧しかったのでした


ハンズは
ニーナと言う
若い女性と
暮らしていました

ニーナは
なんの感情も
持たないハンズの
世話をしてくれました

朝起きて
朝食を作り
家事をすませ
機織りの仕事を
夜遅くまでして

毎日毎日
その繰り返し
ハンズはもちろん
何も話しません

でも
そんなハンズに
ニーナは
いろいろな
話しをたくさん
しました
時には
一言も話さず
ハンズに
寄り添いました


ニーナには
両親がいません
戦争が
ニーナの両親を
殺したから

小さな時から
ニーナは
1人で生きてきました
いつも
1人で生きてきました
走って
走って
走って
生きていた

じゃないと
1人では
生きては
いけなかったのです

そんな時
ハンズと出会いました

毎日同じ場所に
座っているハンズ

ある日
ニーナは
ハンズが座っている
所から何が
見えるのか
気になり
ハンズの隣りに
腰かけました

ハンズに声をかけたが
ハンズは黙っていたので
仕方なく
ニーナも黙って
ハンズと
同じ方向を見ました

なにもなかった

なにもなかったけれど

ゆっくりと
時が流れました
こんなに
ゆっくりと過ごしたのは
初めてでした

それからニーナは
ずっとハンズの
そばにいたいと
思いました

走って走って
1人で生きてきた
ニーナは

ゆっくりと
ハンズと共に2人で
生きていきたいと
心の底から
思いました