兄は簡単に同行を認めた。「来てもいいが邪魔はするな」
ラルフは苦笑した。 「お、おう任せとけ」 そういうラルフの顔は不安げだった。情報によると目撃はこの付近の森アーバドであったらしい。計画を立てるために近日ギルドに集まることになった。
「速くしないと龍が移動するかもよ」
私が言うと兄は表情を緩め言った。
「龍の目撃されたってことはそこに居座っているんだろう」
「ならいいけど」
私は兄の家を出た。家に向かう道を歩いていると道に一輪の花を見つけた。 「サアァ…」

風…。ふと気になりその花を摘んだ。
「ギィィ…」

家の扉は古く開けると変な音がでる。私は摘んできた花を花瓶に移した。椅子に腰掛け花を見つめながら…あの日のことを思い出した。

「お前達は他人を退けてでも生きろ」

父さんはなぜあんなことを口にしたのか?。他人思いだった父さんが…。 気がつくと朝になっていた。どうやら寝てしまったらしい。

「おーいジャック」

自分の住み込みで働いているアイルーの名前を呼ぶ。
「朝飯作ってもらっていい」

「任せて二ャ」

「ありがと」

タダでという訳ではない働いてもらうために代金は週一で払っている。朝の憂鬱に浸りながら山を見る。
「旦那」

「何?」

ジャックがすまなそうに言う。

「申し訳ないけど特産キノコをとってきてほしいニャ」

「それがないと料理が完成しないニャ」

「いいよ、すこしくらい」
「完成しないと気がすまないニャ!」

ジャックは完璧主義なのか完璧にしないと気がすまない奴なのだ…。

「わかったよ」

「う〜ん、森と街じゃ森のほうが近いな…、ジャック朝の運動変わりに森に行ってくる」

「はいニャ!」

防具を付けて太刀をさし一様最低限の物をポーチに入れ家を出る。

「サアァァ…」

朝の森はまだ肌寒く息が白くなった。

「チュンチュン」

鳥達の朝の歌に心が和む…。キノコは大抵下に生えているので下を見ながら進む
「?、あった」

キノコは簡単に見つかった。他にも薬草や素材玉の元になるネンチャク草を見つけた。

「ふふん、来てよかった」
独り言を言う。帰り道で渓流の水をすくって飲みついでに顔を洗った。
「ジャバッ」

突然なにかが渓流のほとりに降りた。私は反射的に近くの岩に身を隠した。岩から覗き私は目を疑った。それは全身が白銀の美しい姿…幻獣キリンだった。幻と言われるほど目撃例が少ない獣である。
キリンは水を飲み森の静寂に包まれていた。狩人でありながらその時はこの場を乱したくなかった。いや自分もこの静寂に包まれたかったのかもしれない。
暫く静寂が続いた後キリンは去って行った…。私は静かに森を出た。