タバコをふた口ほど吸ったところで、男が部屋に戻って来た。


「臭えなあ。おまえ、タバコなんか吸うんだ? 悪いけど家では止めてくれ」


 男にそう言われ、私は「チッ」と舌打ちし、まだ長いタバコを携帯灰皿に押し込んだ。

 イライラする。それはニコチンを十分に体内に収められなかったからか。あるいは男がやる前と後で態度が一変したからか。それとも……


 私は足元に脱ぎ捨てられた下着を拾い、無言でそれらを身に着けていく。


「何だよ?」


「帰る」


「怒ったのか?」


「別に……」


 男に背を向け、ブラウスのボタンを嵌めていると、男が後ろから腕を回してきた。


「志乃、どうせ明日は休みなんだし、泊まって行けよ。また抱いてやるからさ」


 男の息が耳に掛かる。わざとやっているのだろう。私が感じると思って。でもお生憎さま。もう嫌悪しか感じないわ。