まだまだ暑い夏みたいな日々が続く中、始まる新学期。

夏休みボケも抜け始める頃……学校では、毎日あの噂。



「江田さんと、陽呂が婚約したんだってー」

「江田さんってお嬢様なんでしょ?」

「だから、江田さんから無理矢理らしいよ?」

「えー最悪ーーー」

「金持ちだからってイイ気になんないでよねー」



毎日、こんな会話ばっかり聞こえて来る。

多分、私が居るのをわかってて、聞こえる様に言ってるんだろう。



これも、陽呂がモテるから。

陽呂は、確かにかっこいいし。

少し悪い感じが女ウケするみたい。


前からわかってた事だったから、それなりの覚悟はあった。




けどね?




別に……そこまで言われる筋合いないんですけど?


そう思って、わざと私のそばで、喋ってる女子を睨んだ。


「江田さん、睨んでない?」

「こわーい」


何が怖いよ?

あんた達の方がよっぽど怖いわっ!



少し離れた距離で睨みあう。


「ちょっと……心ちゃんっ!」


もう、我慢の限界っ!そう思って一歩を出そうとした瞬間。

親友の愛未(マナミ)に止められた。


「心ちゃん……本当に気強いんだから」

「だって! むかつくんだもん」

「そーだけど……ねぇ?」


私を覗き込むかの様に下から栗色の瞳で見つめ、少し柔らかい髪を揺らして、苦笑いをしてる。


愛未は、小さくて可愛くて守ってあげたくなる様な女の子。



私とは、正反対。



昔、愛未にヤキモチ妬いた事もあった位。

本当に可愛い女の子。



「でも陽呂君との婚約、良かったね♪」

「……よくもないけどね?」

「何でーーー??? 陽呂君の事、好きだし……んご」