「な、何ですかこれ!」 張り上げた声は情けがないくらい震えていた。 仕方がない。無理もない。 だって、私は今しがた、信じがたい、目を疑うような世にも奇妙なものを目にしたのだ。 「何って…キスマークに決まっているだろう」 即座に返ってきた声は甘く低く、とても落ち着いている。 だから私もいくらか冷静に──なれなかった。 たかがキスマーク。 されどキスマーク。 全身にこんな蕁麻疹みたいな鬱血があれば焦るでしょーが!