7月7日。
今日、俺は幼馴染の園川織姫(そのがわおりひめ)と近所の七夕祭りに来ていた。

「せーちゃん! あれやろう、あれっ!!」
「……だからさ、俺の名前は“ほ”から始まるわけで、“せ”じゃないんだけど……」
「うるさいなー。そんなの生まれた時からずっとじゃん」
「ふーん……お前は生まれた時から言葉喋れたんだ? それは初耳」
「もうっ、そうやっていっつも揚げ足とるっ」
「もっと言うなら、お前が一番最初に言ったのは“へーたん”だ。……考えてみると、これって結構ひどいよな?」
「しょうがないでしょっ!? ちっちゃかったんだからっ」
「“ほ”が言えなくて、仕方なく“せ”にしてやったにしても、もういい加減“ほ”くらい言えるだろ? 言えないのか?」

気の強そうな目でキッ、と睨まれる。

(怖くも何ともないけど……)

「ずっと“せーちゃん”って呼んできたのに、今さら“ほしひこ”なんて呼べないってば。言いづらすぎっ」
「言いづらすぎって……それ、俺の正式名称なんだけど。それにお前の名前だってたいがい言いづらいだろ?」
「んなの、私のせいじゃないもんっ。大体にして、せーちゃんがやだやだやだ言ってたんでしょっ!? ふたりセットで七夕ネームって言われるのっ」

(まぁ、それはそうなんだけど……それはそれ、これはこれ、っていうか――)