「痛えな…おい、お前からぶつかってきたんだろ、謝れよ。」
佐倉蒼依、18歳。
本日より晴れて大学生。
記念すべきその初日に、私は何やら見知らぬ男に怒鳴られている。
これは…
非常に面倒な男にぶつかってしまった。
「あー、すみません」
晴れの入学式に遅れることだけは避けたいので、とりあえず適当に謝ってみる。
と、男は私を小バカにしたような笑みを浮かべて吐き捨てるように、一言。
「はっ…可愛げのねー女だな。」
「…は、い?」
「そんなんで社会人はつとまんねーぜ、無愛想女!」
背の高い男が、遥か上から私を見下ろす。
え、嘘でしょ。
初対面の人間にここまで不躾な暴言を吐く人間がいるなんて…あり得ないわ。
そんな驚きと怒りで身動ぎすらできない私を嘲笑うように一瞥し、男はひらりと身を翻して去っていった。