『夢見姫殿 西尾清良殿はお預かりした 七月二九日、午後九時 当方へ来られよ 付き添いは岡崎瑛殿並びに安城太一殿のみとする それ以外の者が同行した場合は、人質の命は保証しかねる 重々承知の上、行動されよ 伊奈孝太郎』 矢に結ばれた手紙には、こんな文と詳しい住所が書いてあった。 泣いたり叫んでいる暇はない。 指定された日は明日。 あたし達は、留衣さんが用意した車で、 伊奈が指定した場所――東京へ向かって、出発した。