シドに受けた傷を治療しながら船はトイス王国へと進む。
太陽はもう頂点を過ぎ、傾きにかかっていた。朝早くテラカイズ島を出たにも関わらず、シドとの攻防で随分時間を取られてしまった上、行き先が変更になったことで今夜は、船で夜を明かすことになりそうだった。

「あ、そういえば、繰風はどうなったの?」

「ああ、ここにある。いい証拠になるだろう。」

シドが蹴り飛ばした繰風はこっちの船に飛んで来て、ガルがそれをキャッチしていた。
鞘はないので抜き身のまま、ガルはそれをテーブルの上に置いた。

「あんなことが出来るなんて…ニーナのもそうなの?」

「これは風の力が宿ってるみたいね。私のは『弾火(だんか)』“火”が宿ってるの。ほら、ここ見て…」

ニーナが差し出した銃のグリップには細い金の細工と赤い石がはめこまれており、その形は燃え上がる火が表されていた。

「ホントだ。
じゃ、繰風は…?」

「これだ、緑の石がはまってる。」

リュートが繰風の柄を指差した。
そこには、弾火とおなじように細い金の細工と緑の石で風が表されていた。

「これで4つかぁ〜俺らってすげぇよな?
これは、誰が持つ?やっぱりシーファか?」

リュートが繰風を手に振って見せる。

「無理よ!私、剣は扱えないし…」

「いや、それは持っていかないほうがいいだろう。」

「え〜っ!なんでだよ!」

「その剣は人を殺しすぎだ。それを俺たちが持つということは、殺しの恨みまでもらっちまうって事だ。そんなの、扱いきれるか?」

ガルの言い分は最もでリュートは繰風をテーブルに置いた。

「そうね、繰風はトイスに持っていった後、どこか安全な場所に封印しましょう。」

「でも、いいの?
みんな、宝を探してるんでしょ?伝説の武器って言うくらいだから、結構なお金になるんじゃ…?」

「伝説の武器だからこそ、簡単に売ったり出来ないのよ。また悪人の手に渡ったら大変だもの。
だから、人の目が届かない場所に隠すのが一番なの。」

「…あなた達…どんな旅をしてきたの?」

シーファは3人の今までの旅がさっき聞いた話だけでははかりきれない濃いものだった事に驚きを隠せないでいた。3人は顔を見合わせて、笑うだけだった。