朝が来て、シーファはリュート達と旅に出ると子供達に告げた。

やはり、みんな悲しんだが、反対する子はいなかった。子供よりもペックがまだ納得してないようすだった。

「シーファ姉ちゃん、いっつも海ばっか見てたもんな。俺、姉ちゃんはいきなり海から来たから、いつか海に帰るんだと思ってた。」

クルトは泣きじゃくるミーシャの頭を撫でながらそう言った。

「クルト…もう、あんな奴らはこないけど、それでもあなたが、みんなを守ってね。」

クルトは力強くうなずいた。

ペックの屋敷からみんなで歩いた。
露店のある通りを通ると、店のおばちゃん、おじちゃんが子供達に、と、たくさんの物をくれた。
街のみんなで子供達を守る。シーファの言っていた通りだった。

シーファの荷物は全て燃えてしまっていたが、城から持ってきた物は何もなかったし、今まで貯めてペックに預けていたお金は、必要な物を買うのには十分すぎるほどで、そのほとんどを家の再築にあてて欲しいと、カーラに渡した。

金髪のカツラは燃えてしまったので、買い物はニーナとカーラに任せた。

「準備OK!よし、行くか!」

3人が先に買い込んだ荷物と共に乗り込み、シーファはみんなの顔をもう一度見回した。

「…じゃ、行くね。
みんな、元気で…」

「…シーファ、待って。」

カーラが小さな包みをシーファに渡した。

「これは、今まで一緒に暮らしたシーファに。気をつけていってらっしゃい。」

中に入っていたのは、高級な木で出来たクシだった。

「ありがとうございます…今まで…お世話になりました。」

クシを握りしめ、頭を深々と下げる。カーラの顔は優しく笑っていた。
と、ミーシャが泣きながら抱きついた。

「シーファ姉ちゃんっ!…また、会える?帰ってくる?」

「ミーシャ、この海の先のどこかに私はきっといる。そして、ずっとみんなの事を想ってる。離れていても海が私達を繋げてくれるわ。ほら、もう寂しくないでしょ?」

ミーシャが可愛い笑顔を見せるのを待って、シーファは船に乗り込んだ。

そして、船は滑るように岸を離れていった。
遠くなるシーファ達を見て、クルトが言った。

「シーファ姉ちゃんは、女神様に良く似てたね。」