3人の絶叫にシーファは目を丸くした。

「リュートから海宝堂の話を聞いて、私も一緒に行けたらって思ったの。
やっぱりダメよね?3人で始めた事だし、よそ者が入る隙間なんて…」

「やっ―――たぁあ!大歓迎に決まってるだろ!なぁっ、ニーナっ、ガルっ。」

大興奮のリュートが同意を求めるが、2人の表情は微妙だ。

「…なんだよ…嬉しくないのか?俺達のしてきた事を一緒にやりたいって言ってるんだぞ!」

「そうね…でも、理由は?海に出るなんて、楽しそうじゃ納得出来ないわ。」

「それに、子供達の世話はいいのか?途中で投げ出すのはよくない。」

2人の厳しい意見は当然だった。
一緒に海に出る以上、その真意が謎であったり、いい加減では、上手くいくはずがない。
リュートはがっかりしているが、正確な指摘なだけに何も言えない。
しかし、シーファの決意の瞳は曇ることはなかった。

「当然ね。そんなに簡単に仲間にしてもらおうなんて思ってないわ。
でも…私にもどうしても海に出たい理由があるの。」

「………それは、あんたの生まれに関係あるのか?」

「おばちゃんに聞いたのよね、私が故郷や親の話をしないって。
そう、それが理由なの。
実は…私ね…」

シーファが息を吸ったのと同じタイミングで、勢いよく食堂のドアが開いた。

「シーファ姉ちゃんっ!」

息を切らせて入ってきたのは、昼間、男達にからまれていた少年だった。

「クルト?一体どうしたの?こんな時間に…」

「大変なんだっ!家がっ…僕らの家がっ!」

よく見るとクルトの頬も手も膝までもがすすで黒くなっていた。
必死なのは、靴を履いていない事からも推察出来た。

「戻るわっ!」

シーファはクルトを背負うと走った。
リュート達も急いで後を追った。