午後もケンに付き合ってもらい、二回に分けて事務室と教室を往復した。
 理解できないのは、毎年こうなるとわかっていて持ってくる人間たちの心境。まだ、呼び止められてその場で……というほうが受け入れられる。
 その場で断る選択権を自分に与えられるからだ。
 置いていかれたものに関しては拒否権も何もあったものじゃない。
「司、今日部活は?」
「悪い、休む」
「……だと思った」
「いつもと同じ練習メニューやらせておいて」
「わかった」
 ケンと別れ、帰る途中に梅林館へ寄り本を数冊借りてから帰宅する。
「おかえりなさい」
 いつものように母さんに出迎えられ、ハナもどこか足取り軽やかに寄ってきた。