もう二度とここには戻りたくなかった。

 ほら、あの女がまるで汚いものを見るかのような目つきで、こちらを窺っている。
 そして、理不尽な罵声を浴びせるのだ。

 もうすっかり、この家の主人気取りなのね。

 そういえば、あの人は……今はまだいないみたいだ。
 帰ってきたら、何を言われるだろう。

 ……何も言われないかもしれない。

 あの時から、変わってしまったあの人は、私のことなんて興味がないはずなのに、それでいて……縛りつける。

 そんな日々から逃げ出したくて、夢中で家を飛び出した。

 でも、もう少し計画を立てたほうが良かったのかもしれない。