①

「尚樹、醤油とって」

「おう。はい、美葉」

「あれ、これなんか色変じゃない?」

「あ、ごめん。それ酢だったー」

「そっか。どおりで酸っぱい匂いすると思った」


「……えーと、君達。なんか、すごい馴染んじゃってるけどさー、一応まだ話し合いの途中なんだよね」

 先程の美葉の衝撃的な発言の為、貴之達は焦り、慌てたが、美葉の爆音並みの腹の虫の鳴き声を聞き、尚樹はダッシュで台所に向かった。

 弱っているだろう彼女の胃のことを考え、なるべくお腹に優しい、様々な種類の料理を数品手際よく拵え、それらをテーブルに並べる尚樹。

 そんな尚樹の様子をずっと目で追う美葉。どうやらその動きに感心しているようだ。

 尚樹の手によって並べられた料理を前にして、匂いを嗅いだりなぜか警戒している様子の美葉だったが、しばらくすると勢いよく食らいつき始めた。