「じゃあ・・・。
 私が出てってあげる」

そう言って歩き出そうとした時
目の前が真っ暗になった。

一瞬何が起こったのかわからなかった。

今、私は航生の腕の中にいる。

「離して」

「無理」

「なんで?」

「優香が心配だから」

「心配することなんて
 何一つないよ・・・」

彼は私を抱きしめたままつぶやいた。

「・・・バカ」

「はっ!?
 バカじゃないしっ!」

「バカだろ!
 泣きたいなら泣けよ。
 辛いなら辛いって言えよ。
 なんで一人でそんないっぱい
 抱えてんだよ!」

「何言ってるの?
 つらくなんかないよ。
 ただ毎日同じことをしてるだけ」


そう・・・。
ただ同じことを繰り返すだけ。

男に抱かれて・・・

また違う男に抱かれて・・・


「自分の体を売るのが
 優香にとって当たり前なのか?」

「なんで知ってるの!?」

「ダチが前みたらしい。
 優香が年上の男とラブホ入っていくの」


バカみたい・・・。
結局こうなるんだ・・・。


私は航生から離れた。

「だから?」

「自分の体は大事にしろよ」

「今更だよ・・・。
 私は中2のとき父親に犯された。
 あんなのもう父親なんかじゃないけど」

私はそういって笑い飛ばした。


「それ・・・ホントか?」

「うん。引いたでしょ?
 引いてくれていいんだよ?
 軽蔑してくれていい・・・。
 そんなのもう慣れたから」

中学の時友達にこのことを話したら
みんな私から離れて行った。