大学1年、春。
一人暮らしも1年生。

未だ慣れない7畳1間の空間で、私は妙に顔が整ったコソ泥と対面していた。



実家から持ってきた安物のちゃぶ台をはさんだ向かい側。
その奇跡は妙に落ち着かない様子で、胡坐をかいている。
顔だけはいっちょ前に憮然としていて、偉そうだ。


「で、そろそろ白状しなさいよ。」
「だから、何を、だよ。」
「しらばっくれるな。」


私がパンと机をたたくと、一瞬たじろぐ男。
けれども再び不機嫌極まりない顔に戻って、ため息をこぼす。


「ため息つきたいのは私の方よ。買出しに行って戻ってきたら、見ず知らずの男が部屋に居たんだからね。」
「だから、別に悪いこたぁしてねぇよ。」
「じゃあなんで、ここにいるのよ。」
「…身に覚えがねぇ。」


眉間にしわを寄せながら、男は吐き出すように呟いた。


「ここがどこかもわかんねぇって言ってるだろ。大体…。」


そこで言葉をきって、部屋の中を見回す。


「妙ちきりんなものばっか飾りやがって。しかもその格好。お前、バテレンか?」
「はぁ?バテレン?っていうか、何が妙なのよ。」


あなたのほうが大分妙だけど、と呟くと、男は再びため息をついた。