「ハル」

「何?アザール様」

2人で王宮の庭を散歩している時、不意にアザール様が私の名前を口ずさんだ。

「……桜が、綺麗だな」

「そうだね。気持ちいい」

一面に咲き誇っている桜に囲まれる感覚が新鮮で、私は空気を思いっきり吸い込んだ。

こうして2人っきりで過ごすのは、いつぶりだろう?

「……ハル」

もう一度、私の名前を呼んだ。

「どうしたの?」

顔を覗き込むと、突然、背中に腕をまわされた。

「わっ!な、なに?」

彼は何も言わず、さらに力を込めて私を抱きしめた。


痛みさえ感じる強い力。


しかし心の奥底から、甘い感情が芽生えた。

アザール様は私の髪に顔をうずめ、吐息混じりにささやいた。

「もう、全て終わったのだな」

「……うん」

「そなたと、ずっと一緒に居られるのだな」

「うん」


言葉にして、実感して、やっと手に入れた幸せを噛みしめる。

いつか想像していた、愛しい人と2人だけで過ごす日々。

それがやっと、現実になったのだから。



「離さない。一瞬たりとも。そなたは永久に私のものだ」

「私も。離れろって言われても、離れないからね?」





「私の愛しい、ハル」








たくさんの桜の下、2人は甘く優しい、誓いのキスをした。