――……。


……。


私たちは手を繋いだままマンションへと入った。

いつもと変わらない通路、いつもと変わらないエレベーター、
そして、いつもと変わらない龍輝さんの部屋のドア。

「ただいま」と声をかける龍輝さんもまた、いつもと同じ。




…だけど、玄関を開いたところで見えたのは、いつもとは違った光景だった。




「おかえり、龍輝」


…缶コーヒー片手に、壁に寄りかかった男の人が私たちを見る。
その人は、この街には住んでいないはずの人…――朔也さんだった。


「朔也さん!? ど、どうしてここに…!?」


驚きと戸惑いを隠せない私に、朔也さんは微笑む。


「俺だけじゃなくて、みんな来てる」

「…みんな?」


「来て」


朔也さんは私の手を躊躇いなく掴み、部屋の奥へと進んでいく。
そして…――、


「えっ…な、なにっ…?」


――…部屋の中には、仲間たちが居た。
みんながみんな笑顔を見せていて、どこか嬉しそう。

そしてそのみんなの手前に、ビックリするくらいの量のご馳走が並んでいる。




「真由ちゃん。メールの返事、しないままにしちゃってごめんね」


申し訳なさそうに顔の前で手を合わせる優ちゃん。


「龍輝はいつも急だから、準備するのが大変だったなぁ」

「え、健ちゃんはコップ並べただけじゃん」

「お前はつまみ食いばっかりだろ」


優ちゃんの隣で豪快に笑う健吾さんと、その横でいつもみたいにけらけら笑う大雅さん。


「真由先輩、おめでとうございます!!」

「ちょ、綾ちゃん綾ちゃん、まだ“おめでとう”は早いよー?」

「あっ…す、すみません、ついっ…!!」


あたふたしながら頭を下げる綾ちゃんと、チューハイ片手にニコニコ笑ってるマコさん。


「驚かせてごめん。
でも、全員居ないとダメなんだ。って龍輝は言ってるし、俺たちもそう思ってる」


そう言って、みんなのところへと行く朔也さん。


「ど、どういうことですか…?」

訳もわからず、みんなの顔を呆然と見ていた時…。