――……。


……。


すっかり暗くなった道を、トボトボと歩く。


「………」


…どうしよう。
私、新田くんのことばっかり考えてる。

違うことを考えようとしても、新田くんの笑顔、言葉、態度が混じり込む。


……新田くんのことが、頭から離れない。




と、その時…――、




「あれ? 真由?」




――…今は会いたくなかったその人が、私を見て不思議そうに首を傾げた。


「…龍輝さん…」


…仕事を終えたらしい龍輝さんが、躊躇うことなく私を見る。

ううん、私じゃなくて…、私の手にある花束を見てる。




「…それ、どうした?」

「………」


…どう答えよう?

どう言えばいいんだろう…?




「誰かに貰った?」

「………」


「男?」

「……はい」




…龍輝さんの声は、低くて重い。

そんな声で真っ直ぐに問われたら、黙ったままでは居られなかった。




「誰から?」

「…新田 春樹くんという、1年生です。
あの…、彼のお家がお花屋さんで…それで、“お詫びに”と…」


「……新田…。
お詫びって…、何かされたのか?」

「…色々、あったんです。
その人と私が、ちょっと噂になっちゃったり…」

「…へぇ」




ドキ ドキ ドキ....


龍輝さんは、色の無い瞳で私を見ている。

その瞳はまるで、不安定な私の状態を見透かしているかのような…――、




「純愛」




――…え?






「その花、パンジーだろ」