* 歪な者たちに、炎は纏まる
薄暗く、じめじめとした不気味な森の中に、彼ら二人はいた。
「おいディオン、本当にこの先にあるのか?」
「さっきから何度も五月蠅いなあ。あるって言ってるだろう」
より一層不機嫌になった声に、フェイは口を噤(つぐ)む。
彼の少し前を、ディオンは歩いていた。
その後ろ姿を見るだけで、これ以上話しかけるな、というオーラが伝わってくる。
この森に入って、もう何日目だ?
いくら歩き続けても、薄気味悪い風景ばかりが続いているじゃないか。
なぜ二人がこんな場所にいるかというと、遡ること数日前。
アウリスから離れた、クレタスという港町で、彼らは体を休めていた。
『エルフの里へ行く』
ディオンがそう言った。
『何千年も生き続け、知識豊かな妖精――エルフか。どこに里があるのか知っているのか?』
ああ、と答える。
『もしかしたら、双子について何か知っているかもしれないな』
一瞬にして、期待に胸が膨らむ。
早速行こう、とフェイは腰を上げ、そのままクレタスを後にした。
そして数日後の今に至る。