* 純白な心は儚く、けれど強い


「一体、これはどういうことだ……」

アウリスについた三人は、目の前の光景に思わず立ちつくす。

 昼時であるこの時間帯は、必ずと言っていいほど、街は賑わっている。
 だが――……。

「誰もいない。それに、静かすぎる」

まるで、夜中の街のような静寂さだ。

「市場の方へ行ってみよう。誰か、いるはずだ」

どくんどくんと、鼓動が速くなっていた。

「そ、そうね。行きましょう」

三人の足音が、やけに大きく聞こえる。

「これは……!」

フェイは驚きを隠せない。
市場に人々はいたが、誰もがその場に倒れていた。

「おい、しっかりしろ! おい!」

フェイは慌てて駆け寄る。
いくら呼び掛けても、いくら体を揺すっても、起きる気配はない。
死んではいない。それは確かだ。

「魔法ね……」

アンネッテがじっと人々を眺めながら、呟いた。

「誰かが魔法で街中の人々を、強制的に深い眠りへと落としているんだわ」

「一体誰が……」

「わからない。でもこれだけの人々を相手に魔法を使うには、一人では不可能ね。数十人以上の者がいない限り――」

アンネッテはハッとなる。
フェイもまた、気付いたようだ。

「レクス」

二人の声が、重なった。