今日も月が綺麗だ


昔、死んだお父が月には兎がいると言っていた


小さなあたしは簡単にそれを信じて兎を探して毎日夜空を見上げた



しかし兎はなかなか見つからなくて


いつもしょんぼりしながら帰ったあたしをお父は笑いながら迎えてくれた



嘘を信じて毎日兎を探す娘を見て、楽しそうに…、楽しそうに…



そうしてしばらくしてお父が死んで


あたしは初めてお母から兎は居ないと聞いた



人は、嘘つきだ



叔父さんの家へ行くと言ったお母の手は死人のように冷たく、顔に張り付けた笑みは目が笑っていなかった


それでも不思議に思わず、お母につられるまま行った先は女の世界だった