ケータイ小説 野いちご

オトナの純情-最後の恋-

最後の恋
  8.このまま世界が終わってもいい~Last love~


「寒くないか? 気分悪くなった?」

「ううん。どっちも大丈夫」

「じゃ、行こう」


促すと同時に譲の手が伸びてきて、わたしはかすかに首を振った。


「さきに行って。ついてくから」


譲はほんのわずか、じっとわたしを見て、それから小さく肩をすくめ、マンションのほうへと歩きだした。

タクシーが脇を通りすぎる。

譲の歩調はゆっくりとしていて、わたしは広い背中を追っていった。


話を切りだすのには勇気と時間がかかる。
何から云えばいいのか思いつかないまま歩いているだけで、ともすれば立ち止まりそうになる。

黙りこんでいるうちに、めずらしく譲も一言も口を開かないことに気づいて、わたしはふと足を止めた。

あとから来るヒールの音を気にしていたのか、譲もまた足を止めて振り向いた。

それでも何も云わなくて、ただ譲はわたしを待っている。


「譲」

「何?」



「わたし……譲を裏切ってる」



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