処分を食らって初めての土日を挟み、美化運動5回目の今日は食堂の掃除になった。


椅子も長テーブルもきれいに拭いたあと全て脇に寄せ、床も窓もピッカピカにしろとのご命令。


300人は集められる広さを3人でやれとか嫌がらせだ。塵ひとつ指紋ひとつ残すなとか無茶ぶりも大概にしろ。


そんな文句すら一時中断になったのは、バンビ先輩が上級生の男子に呼び出されたからだった。


「ええええ~! なして出直させちゃってんすかあ! 絶~対っ告白だったに決まってんのにぃーー!」

「外まで聞こえるように声張らないでくれる!?」


出入り口で男子とひと言二言話してから戻ってきたバンビ先輩は、どことなく疲れている。


「掃除ほっぽるわけにもいかないでしょ」

「どうせフるんだし、10分そこらで終わったじゃないっすか。行ってきて良かったのにー」

「いいから箒動かす! 水拭きまでしなくちゃいけないんだから!」

「なんすか。私真面目でしょアピールっすか? ときめかねえっす」

「うふっ。私はバクを見てると足が疼く」


蹴飛ばしたいって意味でな。


ぷっと吹き出せば、先日バンビ先輩から大嫌い判定を受けたバクが俺をねめつける。


「シカトされなくて残念だなぁ、バク」


口の端を上げた俺に、バクは頭を掻きむしりながら歩み寄ってくる。


「あーもー……っこのフラストレーションどうしてくれんのや!」


知らねえよ。無駄に引っかきまわそうとするお前がわりぃんだろうが。