「がおって(疲れて)んね~」


登校時間、下駄箱で会ったミーアは声を弾ませる。


「他人事だと思って……。もう嫌だよぉ~! 昨日めちゃくちゃレポートに時間掛かって、寝不足でしかないっ」

「それだけ?」

「それだけ!? 宿題もあるのにレポートまで書いてらんないじゃんかっ」

「違くてさあ。レポートだけが嫌なの?」


小首を傾げてから、その言葉の真意を探り当てた。


「ああ……なんかもう、どうでもいいかなって」


諦めを含み鼻で笑う。バクにはどうしても過剰反応してしまいがちだったけど、昨日でやっと思い知った。


「私が嫌がれば嫌がるほどバクは喜ぶからさ。これからは心を無にして接しようと思うの」

「へぇ? 楓鹿にしては気付くの早かったね」


悟るようなことでもあった? と訊かれ、どきりとする。


「や、べつに……あったような、なかったような……」


頭のてっぺんから撫でるように毛先まで指を通すと、思い出すのは虎鉄のことだった。


なんで昨日、頭突きなんかしちゃったんだろう。おとといも勘違いで蹴っちゃって、反省したばっかりなのに……。


でもさ、怒ってないとか言うし、なんでか笑うし、平然と可愛いとか言うし。調子狂うっていうか、急に抱き寄せられたから、びっくりしたんだよ。


守ってもらおうとはしてたけど、『離れないから』とか『守ります』とか言ってくるしさ。


もしかして私のこと、好き!?って思うじゃん!


でもなんか……なんっか、違う気がする!