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まさに開拓がんばりましたと言わんばかりの小高い丘の中間に建つ、折舘東(おりたてひがし)学園高等学校。


通称“オリガク”は、とびきり偏差値が高いわけでも低いわけでもないが、生徒の自主性を重んじるあまり進学校になりきれない一風変わった公立高校だ。


公立の割に広く綺麗な校舎。活発な部活動に伴い、要項さえ満たせば与えられる部室。


ゆるい校風に、3種類から選べる制服は改造可。そのため生徒会など特有の権限を持つグループは制服を統一するのが伝統だとか。


国道沿いの丘陵地ってこともあって、ロードサイド店舗も大規模商業施設も多いから地元の奴は特に不便を感じることもなく、オリガク生もわざわざ街まで遊びに出ることも少ない。


年々倍率が上がるのは、その辺りに理由があるのかもしれない。


『ほどほど田舎で、ほどほど都会にある高校』


そう卒業生が口をそろえるオリガクには、誰が言ったか“檻の館”という別称もあった。


入学当初は分からなかったその別称の意味が、今はなんとなく、うすーく理解できたような気がする。



「美化うんどぉ? さすがオリガク、予想の斜め上をいくわー」


3校時目開始から20分ほど経った頃、下駄箱正面にある連絡掲示板に貼られていた処分通知にバクはけたけたと笑う。


俺は自分の名前まで連なってるから微塵も笑えねえ。