「あー! これバンビ先輩が載ってるやつでしょ!?」

「めっちゃ貴重だよね! ほんと可愛いーっ」


教室の一角が熱を持っているのは気にならないが、


「なしてお前がドヤ顔してんのわ?」


地元情報誌を持ったきゅうが得意げな顔をしているのは気に入らねえ。


「大っっ好きなバンビ先輩が褒められると、自分も褒められてる気分だろうが!」

「自分が褒められる努力しろよ。目ぇ覚ませ。現実見ろ」

「うるせー! ちゃっかりバンビ先輩と遊びに行きやがって! 呼べよ! やっぱまだ無理!」


平気になっても呼ばねえよ。


プリクラの1枚も撮ってこれねえダメ男が!って朝から頭突きかましてくるような奴はこっちから願い下げだ。


「ま、自分も褒められてる気になるってのは、きゅうの理屈に通ってんべ。なんせバンビ先輩にちょっかい出す奴を殴って、停学食らった身だしな」


バンビ先輩が着ている服のブランドを調べ上げたとタブレットを見せてくるきゅうは、意地悪い笑みを浮かべるバクに動きを止める。


……詫びるつもりがねえなら、黙っときゃいいものを。


「そういやお前、親に泣かれなかったか。停学は初だろ」

「ああ、いきなしごしゃかれた。でもいつかやると思ってたって言われた」


ものすごく怒られはしたらしいが、昨日復学したきゅうは、あっけらかんと答える。


まあ昔から俺ら同様、生傷の絶えないガキだったから、親からすれば今さらって感じだろうが。