ーーー

春の風は、生暖かくて、柔らかくて、それでいて優しくて、なんだか穏やかな気分にさせてくれる。

あたしは校門に突っ立ったまま、感慨にひたっていた。

大きな大きな桜は、昨日の大雨のせいでかなり花びらが散っている。

水たまりに浮かぶその小さな花びらたちは、それはそれで綺麗だった。

ここ最近、ずっとこんな風にボーッとしてばかりいる。

なんでだろうか。

学年末テストの結果がさんざんだったからだろうか。

今日から2年生になったというのに、あまり実感が湧かない。

「……あれ」

手の平にずっと握っていたはずの桜の花びらは、いつの間にか消えていた。

一体いつ、おとしたのだろうか。

「ミナ」

「お」

名前を呼ばれ、振り返ると、そこには笑顔の愛と紗江がいた。

どことなく2年生らしくなった2人は、あたしの肩を抱いて抱き寄せ、嬉々とした表情でしゃべりだした。