この頃から私は腕や足を切ったり、頭を壁に叩きつける様になっていた。

最初は好奇心だった。
ある漫画で、リスカをするとすっきりする、気分が軽くなる、という記述を見た。

「本当に軽くなるのか」と、薄く肌を切ってみた。

よく解らなかった。
なのでもっと切ってみた。

気が付くと腕が血まみれになっていて、私は晴れ渡るような気分になっていた。

それから私は家族にバレないように、いつも長袖を着る様になった。

腕はもう切る場所がなくなっていた。
なので今度は足を切ってみた。

この頃になるともう痛みなんて感じなかった。

そのうちに足も切る場所がなくなっていたので、
今度はお腹や胸を切る様になった。

気が付くと私は中学生になっていた。
中学には通っていた。
そこで友達が出来た。

彼女もリストカッターだった。

ある日、学校の近くの公園に呼び出された。
行くと彼女はビールを煽っていた。
彼氏との事で悩んでるらしい。

私に「切りたい」と言った。

私は切りたいのなら切ればいい、とカッターを彼女に渡した。
これがいけなかった、いけなかったのだ。

彼女は切った。
腕がちぎれるんじゃないかと想う程深く、沢山。
貧血でフラフラしだした。

さすがにヤバイ、と想い、カッターを近くの川に捨て、救急車を呼んだ。
警察も来た。
色々聞かれた。

一緒に病院に行った。
そこで彼女の両親に謝った。
彼女の両親は言った。

「あの子は優しいから、人が傷付く事よりも自分が傷付く事を選んだ。」

あの頃の私にはその意味が解らなかった。

中学は1年の1学期までしか行かなかった。

父はもう怒らなかった。
2学期の始業式の日、私は学校を休んで父と散歩をした。
途中、喫茶店に入った。そこで他愛もない話をした。

母から電話が来た。

何故か嫌な予感がした。

「すぐ帰ってこい」と言われた。

帰ると、いきなり腕を掴まれ、服を捲られた。

どうやらこないだの友達の事件で先生にも
私がリスカしている事がバレたらしく、母が学校に行ってきたらしい。

その場で父と母は喧嘩、私は自分の部屋に逃げ込んだ。

私は病院に連れて行かれ、傷の手当をされた。
その日の夜、布団に包まり、「もう切らないぞ」と誓った。

そんな誓いは次の日には忘れていた。