遠ざかっていく蹄の音を聞いて、リリスは少なからず安堵した。


あの速さなら……私がコルトに殺されたとしても、逃げ切れるかもしれないな。


途中で寄り道とかせずに、真っ直ぐルスカ国へ向かってくれるといいんだが……。


リリスはそう考えながら、近くにあった木の一つによじ登る。


二の腕を汚す血が、木と地面を少しずつ濡らしていく。