「おい、くず!」
「おれはくずじゃねぇ。薬師だ」
くすし、って読むのにこいつ、安藤は俺のことを“くず”、と呼ぶ。
前に聞いたら、どうやら同じ字で“くずし”、という読みの街があるらしい。
そこからとったらしいが俺も街もいい迷惑だ。
あ、そうだ。
あんな言葉遣いをしているが安藤はれっきとした女だ。
しかも美人の部類の。
美人の部類の。
大事だから二回言った。
まったく、世も末だ。
あんな顔からはこのことばづかいは予想外だ。
はじめからわかっていたら、俺はこいつをここに置いていなかった……いや、置いていたかもしれない。ただのきまぐれで。
そう、ただの気紛れで。