「陣、最近なにかあったでしょ?」


「……あ?」





授業さぼりの屋上。


不機嫌にゴロンと寝ている俺の隣で、教科書を開きながら座る佐和が微笑む。



「最近ずっとムスッとしてるよね」


「…………」



青空に白い飛行機雲がなんとも平和な光景。


佐和に心を見抜かれ俺はさらに眉間にシワを寄せる。



「まぁいいけどね。それよりちょっとは暗記できてる?」


「全然。つかお前の声で眠くなる一方なんだけど」


「はは、寝ながらでも聴いてね?」



もうすぐテストが始まるにも関わらず勉強をしない俺のために


佐和は隣で歴史を繰り返し喋り続けてる。


まるで催眠術のようなその声に効果があんのか分かんね―けど


この俺が二年に無事進級できたってことは、効果はあるのかもしれない。