ケータイ小説 野いちご

いつも何度でも

現在
恥じらう鳥


朱里は両親の呪縛から解き放たれ、かつてないほど穏やかな日々を送っていた。

たった一つ、困ったことは、毎週のように告白されることだ。

「いい加減、誰かと付き合っちゃえば?」

裕子が溜め息まじりに言う。

「そーだよ。後から好きになればいいんだし。」

と美奈子も言う。

「だって、怖いんだもん。」

朱里のこと、よく知りもしないのに「好きだ」と言う彼らの気持ちがわからない。

そして、本当の自分を知ったら、きっと嫌いになる。

それが怖い。

その日、珍しく寝坊した朱里は一限目の「古事記」の授業に遅れることを裕子にメールしながら、横断歩道を歩き、つい携帯を落としてしまい、横断歩道の真ん中で立ち止まる。

それは、時間にしたら数秒間のことだった。

しかし、まるでスローモーションのように、近づいて来た車の中の男性が見えた気がした。

次の瞬間、キキーというけたたましいブレーキ音とともに、朱里は歩道に倒れた。

右肩と右足に鋭い痛みを感じた。



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