カブトムシを埋める


やっちゃんがグアムから帰ってきたと、栗山さんから聞いて、私はやっちゃんの家に電話をかけずにいられなかった。
発信音の音。

「―はい、竹園です。」
やっちゃんのママだ。
「志賀です。」
「あらー、まりちゃん!久しぶりねえ。悪いんだけど、やすしは今出かけてていないのよ。」
ちぇっ。また坂田たちとスマブラでもやってるのかな。
そうですか、わかりましたと私は受話器を置いた。居場所は大体わかってる。
私はすぐ坂田たかひろの家に電話をかけて、今からそちらに行くことを伝えた。

ポケモンの人形が詰まったビニール袋をかごに入れて、私は赤い自転車にまたがった。
お盆が過ぎて、夏はかげってきているけれど、やっぱり暑くて、蝉の声は鳴りやまない。ハンドルを握る手に汗がにじんだ。

途中で、自転車に乗った高校生の男の人とすれ違った。日焼け顔で、坊主頭だったけれど、片方の耳にピアスがついていた。
こないだ、キャンプに行った時に立ち寄った温泉のロビーで甲子園をやっていて、おじさんたちがテレビの前にわんさか集まっていたっけ。地元の高校が出ていたのだ。
2回戦で、負けてしまったらしい。