いくら重ねても
いくら囁いても
いくら握りしめても


幸せは俺の手から零れていく




もうずっと、体の調子がおかしかった。


熱はないし…。風邪でもない…。

なのに
胸のあたりが……少し変…。



数ヶ月前から気づいていた身体の異変は続いていた。
だけど
そんなこと、絢と一緒にいたら紛れるんだ。






「優…。なんか最近体の様子が変なんだ」



「陽が?めずらしー…。早く病院行ってこいよ」



「…あぁ…そうする」






優とそんな会話もしていた。
だけど俺は、病院にも行かず放置していたんだ。


胸騒ぎがする。
嫌な予感は必ずと言っていいほど……



――――…的中してしまう。




絢と一緒にいるとき。
いつもなら感じない体の異変が珍しく気になった。






「絢…。俺は生まれてきてもよかったのかな?」



「当たり前でしょ。陽、生まれてきてくれてありがとう」






そういって俺に絢は屈託なく笑いかけた。


最初の印象はどうだったかな?


明るい? 暗い?

でも、俺は絢の周りの空間
絢の隣が好きだ



すごく恥ずかしくて、照れたりドキドキだってする。
だけど
落ち着く……――――…幸せの場所





「俺、やっと見つけた……」



「なに?」





聞こえなかったならいい。


探し求めていたもの……
全て一緒に見つかった。