求めていたのは、優しい手


どんな時にでも無条件に差し出される
今―――…
ゆっくり解いて 溶けていく
自分が手放した…。

けれど
想わずにはいられなかった


“そばにいたい”と・・・。





最初で最後だろう
…心から人を愛して、幸せにしてやりたいと思ったのは。

だから
絢の未来のため、幸せのため

お前を手放そう






「最後のデート…か…」





そう呟いて、家を出た。

靴を履くとき、ふと携帯を落としてしまった。
…クマ?

鮮明に蘇ってくる。
この、おそろいのクマを選んでいた時のこと。






「絢は大丈夫か?俺がいなくても…」






クマはなぜか悲しそうに笑っている。

この間まで、幸せそうだったクマの顔。
こうも変わって見えるとはね…。


見慣れたクマが違うクマにすり替わったかのように見えて仕方ない。




きっと、俺の目線…見る目が変わったから。






「絢、後で話がある。一緒に帰るから一人で帰るなよ」



「う、うんっ」





絢の屈託のない笑顔が俺を苦しめた。

別れたくない・・・。
そう、心は叫んでいる。


でも、絢のためと何度も心に言い聞かせた。




別れるまでのタイムリミットは刻一刻と迫っていた。








放課後

絢が好きな遊園地に行った。
なるべく、わからないように。



別れを控えていることを悟られないように。