――……。


……。


そして約束通り、次の休み時間は優ちゃんにお化粧してもらうことになった。

教室での化粧。
初めてのお化粧だ。

はぁ…すっごく緊張する…。

と言うか…、


「ねぇ、加藤さんと龍輝先輩ってなんでもないんだよね?」

「う、うん…」


…周りに集まってる女子がひっきりなしに話しかけてくることが、緊張の理由かも…。


「えと…去年のクリスマスに、笠井さんが殴られてるとこに偶然通りかかって…その時にちょっと話しただけだよ」


秘密にする理由なんてない。と思ったから、ありのままを話す。


「大雅先輩から聞いたのと同じだね」

「そうだね、やっぱりそうなんだぁ」


…大雅先輩、って…あのチャラ男さんだよね。
あの人、みんなに説明してくれたんだ。

…もしかしてその為にみんなを中庭に集めた?


…なんて、考えすぎか。




「ちょっと真由ちゃーん、動いたら変になっちゃうよ?」

「あっ…ごめん!」

「みんなも質問したいのはわかるけどさぁ、ちょっと待ってて?
やってるこっちは大変なんだからねっ!」


プクッと頬っぺたを膨らませた優ちゃんにみんなが笑い、それからはみんながみんな優ちゃんの動作を食い入るように見る。

美人の優ちゃんの化粧テクニックを真似するためにそうしてるんだ。


…たくさんの人にいっぺんに見られるなんて、初めて…。
私、どうなっちゃうのかな…。






「はい、完成!」


にっこり笑う優ちゃんと、女子の歓声、そして男子たちの驚きの声。


「加藤さん可愛い!お人形さんみたい!」

「いいなぁ、優ちゃん次私もお願い!」

「あ、ずるーい私が先!」


…優ちゃんを奪い合う女子たち。

私は訳もわからず、ぽかーんとしながら部屋の隅に追いやられた。




「真由ちゃん、鏡見ておいで!」

「う、うん…」


相変わらずのニコニコ優ちゃんに促され、教室を出る。