――……。


……。


龍輝さんは私の4歩前を歩いていく。

時々、チラリと振り返っては私が居るかを確認してる。


…ちゃんと後ろに居るから、大丈夫。


本当は凄く緊張してて、今すぐ帰りたいって思っちゃってるけどね…。




「…あのな、俺、今一人で住んでるんだ」

「…え?」


ふっと空を見上げた龍輝さんが、小さく言う。


「俺の親、今けっこー複雑で。
近くに住んではいるけど、あんまり会わない」


……よく、わかんないけど…でも「今は一人暮らし」らしい。



…そういえば、「母親のことなんかもう忘れちまったから、よくわかんねーけどな」って前に言ってたっけ。
それって、「一人暮らしだから」が理由?


…やっぱりよくわかんないけど…、今からその「一人暮らし中の部屋へ行く」のは事実。




…つまり。

龍輝さんと、本当に本当に二人きりなんだ…。




……。




「ここ」


スッと手を伸ばして指差した先にあるのは…、


「う、わ…」


…物凄く立派な、マンション…。