「先生、お疲れ様でした!!今日のサイン会たくさんファンの人きましたねえ~」

「うん。うれしいよ。ありがと」

そう言って私は外に目をやる。

今は桜の季節です。

「全然嬉しそうに見えませんよ?」

私の担当にの神山君がこちらを覗く。

「全然そんなことないよ?」

「でも、この人気小説、華の刻を書いているのが18歳の女の子には到底見えませんよ!!」

「ふふっ。ほめてくれてうれしい。」

そう言って微笑むと神山君は真顔になる。

「いい加減、櫻(さくら)って呼んでもいいですか?」

「だめだよ。その私の名前を呼び捨てで呼んでいいのは一人だけだもん。」

・・・・そう。あなただけ。

「ちぇっ・・・・」

神山君は少しつまらなさそうな顔をする。

「ごめんね?」

「いいですよ。先生の心の中にいる誰かをいつか超えて見せますから!じゃ、次回作も期待してますよ!!次は新撰組が池田屋事件に遭う話ですよね?」

「うん。そのつもりだよ。」

「うわあ~楽しみだなあ!!って、もうこんな時間だ!!!すみません俺もう行きます!!」

そう言って神山君は走り出した。

私はゆっくりと桜並木を眺めながら歩く。

私、更紗 櫻(さらさ さくら)は小説を書いています。

新撰組と女の子が恋に落ちる平凡な物語。

だけど、それは創作なんかじゃない。

私が、2年前16歳のころのお話。

私はなぜか、時を飛びました。

そして、あなたに出会いました。