「あ」


 天冥はふと声を漏らした。明道もそちらに視線をやる。

 目の前に、蘆屋 道満が立っていたのだった。


「派手にやりおったな」


 不気味に道満が笑うと、天冥もほくそ微笑み「まだまだ、祭りはこれから」と言った。


「話は聞いておったぞ」

「ふぅん。どこまで」

「幻周という男の辺りまで、か」

「ああ、そこまでか」


 おおかた、ほとんど道満の耳に入っているようだ。明道は口をつぐんだまま道満を見つめている。


「天冥よ、その貴族と組んでおるのか?」

「組んではおりませぬ。ただ、ちぃと目的が同じなだけで」

「莢をか?」


 のうのうと口にした道満だが、天冥の目をむいた顔を見てから口元を隠す。


「道満殿・・・」

「いやぁ、いかんいかん。俺としたことが」


 禿げた頭に手を置き、かつかつと声を上げて笑う。一方の天冥はといえば、顔から笑みを消して眉をほんの少しだけひそめ気味になっていた。