「う・・・んっ・・・」

 目を覚まし、明道は飛び起きた。

 あの後見知らぬ破れ屋(天冥が住みついていると思われる)まで連れてこられて、そのまま眠ってしまったのである。

「起きたか?」

 ふと横を見てみると、見知らぬ青年が床に座している。

 しかし、それが天冥だということは、声で分かった。

「あれ?」

 自分の知っている天冥とあまりにも違いすぎたため、一瞬目を見張る。

「なんじゃ」

「天・・・め、い・・・か?」

「一夜にして俺の顔を忘れたか、お前は」

 忌々しげに言うと、天冥はプイっと背を向けてしまった。

 そのどこか幼げな姿は【貴公子】というよりも【子供】と称したほうが似合っていそうだ。

 髭もなく、無造作に垂らした髪は細い。

 こうして見ると、本当に若々しさが感じられた。

「・・・三十歳が、一回り若く見える」

「若く?・・・明道、それは俺のことではなかろうな?」

「えっ?そうだが・・・」

「ばぁかか、お前は」

 天冥は向き直り「今年で二十三じゃ」と言った。

「二十三!?」

「まさか、会った時からずっと、俺が三十に見えていたのか?」

「見えてた・・・」

 明道が最初に見た天冥の印象は少し老けているようであったが、烏帽子と付け髭を取るだけで、見違うほど若々しくなった(いや、実際に若いのだが)。