「・・・っ・・・・!」


 誰もいない屋敷の中で、青年、天冥(てんめい)は死にかけの男をジッと見下ろした。その目は冷酷で、そして泣きそうにも見える目の輝きを放っている。



「お前、殺される事を想像した事があるか?」


 天冥はしゃがみ込んで男を見る。


 しかし、男は喘鳴を血とともに噴くだけで、何も答えない。


「・・・やっぱ、答えられぬか」


 天冥は刀印(とういん)を結んだ右手をゆっくりと持ち上げる。


 ―この、悪徳役人。


 刀印を振り下ろすと、浮いていた柳の葉が空気を切る音を立て、その矛先が男に向かった。


「このっ・・・外道めっ・・・・!」


 男がそう言い放ったのは、柳の葉が男の身体に沈んだのとほぼ同時であった。


 血の池が足元に広がるが、天冥はさして気にしなかった。というか、気にならない。


 外道を言うなら、庶民一人を集団暴行で死に追いやったこの男も、充分外道ではないか。


 天冥はそう言ってやりたくなる。