目を開けると、鴉魔法師が横の木に背を預けていた。


 身体のあちこちにできた傷が痛む。


 明道を見やると、肌に色が戻り、白かった肌が黄色くなっていた。


「ふぅー・・・」



 天冥はすぐに重い腰を上げると、明道の横に膝を突き、彼の額に手を当てた。



「何をなさるのですか」



 鴉魔法師が大して何とも思っていなさそうな顔で問う。



「記憶を消すのさ」


「記憶を?」


「何しろ、覚えておいてももらっても厄介じゃからなぁ」



 天冥の右手には、黒いもやと思われるものが放たれている。


「オン・キリキリ・シュチリ・ウン―――」



 しばらくすると、付けていた右手を放し、天冥は疲れ果てたように笑った。