「あなたは、素晴らしい人間だ」

見知らぬ人に、そう言われたら、あなたはどうするのだろう。


誰にも、認められない世界で…

あなたのことを笑顔で認めてくれる人。

あなたの人柄を褒め、素晴らしいと

簡単に口にする人々。


あなたは、その人達をどう思うだろうか。

孤独で、押し潰されそうな日々の中、

あなたに笑顔を向ける人達。

あなたは、その笑顔に救いを求めるのだろうか…。


少なくとも、私はこう思う。


そんな笑顔や言葉に、救われてはいけないと。


なぜならば、その後…

あなたはその笑顔に、見返りを求められるからだ。


善意の寄付。

お布施。



この世で、愛や幸せ…平和や自由、可能性を口にする集団に、

貧乏はいない。


世界の戦場を飛び回り、医療に携わる人達には貧困が多い。

なのに、争いのない土地で、立派な建物の中で、

笑顔ともっともらしい言葉を並べる人達に、金が集まるのは、どうしてだ。





「あなたは、素晴らしい可能性をお持ちだ!それを周りが気づかないだけです」

満面の笑顔を浮かべ、気の弱そうな女に話しかけている中年の男は、小太りでテカッた顔が、油切っていた。

「はあ〜」

力なく項垂れる女はまだ、半信半疑であった。

「自信を持って下さい。あなたは、素晴らしい」

「はあ〜」

力なき声を出す女を見て、男は話題を変えた。

「先に送ったビデオは、見て頂きましたか?」

男の質問に、女は頷いた。

「そうですか!ありがとうございます」

男も笑顔で頷くと、

「今日はですね。ビデオを見られたらお分かりのように、あなたと同じ年齢の方々を迎えて、セミナーと言いますか…交流会を行っているですよ。宜しければ、参加なさってみたら!あなたのお友達も参加していますし」

男の提案に、女は頷いた。