「そうだね…」

彼女は、悲しく微笑んだ。

それに、僕は反応するすべを知らなかった。

彼女の笑い…彼女の思い…同情をひくように、彼女が笑いかけても、それに対して、どう反応したらいいのか。

なぜなら、彼女の微笑みは僕に対してではない。どんな答え…慰め、やさしさも、彼女の求めるものじゃない。

「何黙ってるのよ…赤星浩一……」

彼女は、僕を見、少し気まずそうに、下を向き、

「あんたが、話してくれないと……どうして、いいかわからないじゃない」

彼女の言葉は、もっともだが、慰めることも、やさしくするようなことも、僕の口からは、出なかった。



「赤星って…昔からそうだよね」

彼女は笑い、

「なんか……冷たい…。でも、それなのに…いつも、なんかこういうときは、そばにいて……」

彼女は、僕から視線を外すと、

「ずるいよ…」

その場から、駆け出した彼女を僕は、追い掛けることはできなかった。

(昔からか……)

彼女が去った屋上で、僕は1人…空を見上げた。

澄んだ青空に、やけに眩しい太陽。

「そんな資格は、ないよ」




そう…僕には、そんな資格はなかった。