彼、五藤園博之は、真壁達人と知人関係だった。

以前、達人の会社を買い取ろうと博之が訪問したときに案内係だったのが達人だった。

彼はとても親切で、丁寧だった。

「お前さん、いい人だ。」

「いえいえまだまだです。」

そういって、休憩時間に達人は博之に

コーヒーを差し出した。

「コーヒーは苦手でしたか?」

コーヒーに手を出さない博之に

達人は尋ねた。

「まぁな。」

そういって、コーヒーを飲んだ。

「苦いな・・・。」

博之は言う。

「では、お茶をお持ち致します。」

そういって、走ってお茶をとりにいってくれた。

次第に、彼の性格が気に入り、

プライベートでも話をするようになった。


ある日のことだった。

珍しく、達人がディナーに誘ったのだった。

「えー。結婚してるのか。」

「はい。今、中学三年生の娘がいます。そして妻も。」

達人は照れながら言った。

「で?話とは?」

「はい・・・。」

そこで、達人は身の危険を感じていると話した。

「妻がストーカー行為をうけています。」

そして、その男を捕まえて達人自身が

「近づくな!」

と言ったのだが、無言電話・いやがらせ・・・

「・・・で?どうすればいいんだ。」

「もし、私たちの身に何かあって私の娘がひとりになってしまった場合・・・あなたに娘のことをお願いしたいのです。」